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岩崎書店のブログ

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PTAが20年間先送りしてきた問題を劇的に解決した、たった1つの方法<後編>

「もしドラPTA改革」を宣言、PTAを100%ボランティア型の運営組織に生まれ変わらせた毎日新聞記者の山本浩資さん。前回に引き続き、岩崎書店代表・岩崎夏海が伺ったお話の後編です。記事の最後には山本さんの著書プレゼント応募記載も!

前編はこちら↓

www.iwasakishoten.site

 

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毎日新聞記者の山本浩資さん(右)、岩崎書店代表取締役社長の岩崎夏海(左)

 

最大のイノベーションは「平等の義務」の廃止

 

岩崎 PTA会長就任2年目、改革はどのように進めたのですか?

 

山本 まず、PTAのことを調べました。PTAの成り立ちから始まって、うちの小学校のPTAの歴史はどうだったのか。さらに世界のPTAはどうなっているんだろう? と。そもそもPTAはボランティア団体だから、強制加入ではないんですよね。海外赴任経験者などに聞いてみると、例えばアメリカではボランティア活動であることが前提だから、委員会もないし、年度の初めに自分ができるボランティアをウェブサイトで登録する、そういうしくみが普通らしいとわかって。

 

岩崎 やはり日本はボランティア文化が根づいていないんですね。

 

山本 そうです。戦後できた制度のせいか、自分の子どもが通っている学校には奉仕しなくてはならない、という義務感覚なんですよね。そんな経緯もあって仲間たちと相談した結果、過去を捨てようということになったんです。

 

岩崎 過去を捨てる? ドラッカーも「イノベーションを行う組織は、昨日を守るために時間と資源を使わない。昨日を捨ててこそ、資源を新しいもののために解放できる」と言っていますね。

 

山本 はい。それをとても意識しました。委員会の縮小や、参加しやすい集まる時間の変更など、細かいことをひとつひとつ変えていくこともできる。でも、今までのしくみを捨てて、もっとダイナミックに変えなければいけないんじゃないかって。

 

岩崎 なるほど。何を「捨てた」のでしょうか。

 

山本 PTAの規約に、「会員は平等の義務と権利を有する」と書かれていました。PTA組織の多くに「必ず6年間に一度は委員をやりましょう」という暗黙のルールがあるのですが、つまり、ボランティアだけど義務は平等にあるよ、ということですね。この「平等の義務」は、全国のほかのPTA規約にもかなり書かれている文言です。そこで、「もしドラPTA」最大のイノベーションとして、「平等の義務」を廃止しようと訴えました。「平等の義務」があるからこそ、「3本の『や』」が生じてしまうのではないかと。

 

岩崎 「3本の『や』?」

 

山本 「らないといけない=義務感」

   「らされている=強制感」

   「らない人がいる=不公平感」

   です。

この「3本の『や』」さえなくせば、PTAはハッピーになるはずです、と。

 

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山本 基本は「できる人が、できることを、できるときに」。そして「本当にやりたい人が、やりたいときにやればいい」という、ボランティア側の視点に立ちました。

 

岩崎 組織の名前も「PTA」から「PTO」に変えられたんですよね。

 

山本 そうです。アメリカでは「PTO」と名乗っているところが多いのでそれに倣ったのと、地域や子どもたちには「応援団のオーです」と説明しました。応援団だから、僕も会長ではなく「団長」。お硬いイメージのある「役員会」も、ボランティアしたい人たちをつなぐコーディネーター的な役割にしたいねと、「ボラセン(ボランティアセンター)」と変えました。

 

得意なことを活かして成果につなげよう

 

山本 ドラッカーの「非営利組織のリーダーも、成果を出さなければならない」という言葉があります。では、PTOにとって成果って何かと考えたら、まず第一に、子どもたちの笑顔だと思いました。そしてその先に、大人たちの感動がある。では、大人たちの感動って何だろうと考えたときに、自分の得意なことを活かしてやることで感動が生まれ、それが成果につながるんじゃないかと思ったんです。」

 

岩崎 得意なことなら、率先してできるし成果につながりやすいということですね。

 

山本 例えば学校のお祭りでおばけやしきをやろうということになったとき、保護者の中に暗幕や大道具の仕事経験がある方もいたし、デザイナーさんがポスター描いてくれたり、動画編集も得意な方が担当してくれたのです。PTOの活動の中心となるウェブサイトも、ホームページ制作を仕事にしている方が作ってくれました。僕自身も、PTAの疑問点を調べて文章化し発表したわけですが、それは新聞記者という仕事で身についたことなんですよね。会社や社会で得たものを地域で還元することができる、僕らには地域に居場所があるんだと実感しました。だからみんなにもそれを知ってもらい、感じてもらいたいと思ったんです。

 

岩崎 本当に思い切った改革ですね。仲間からの反発はなかったのですか。

 

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山本 反発もありましたが、おそらく不安のほうが多かったと思います。学校や地域からも、「全部をボランティアの任意加入にしたら、ごそっと人が抜けて回らなくなってしまうんじゃないか」「君がいる今はうまくいくかもしれないけど、もしダメになったとき、以前のやり方に戻れるのか」と心配されました。どんなに仲間うちでは確信が持てても、新しいことを立ち上げるには、関わる人すべてにイメージを共有できないと理解も得られないことがわかりました。なので、最初の一年は規約を変えず、「お試しPTO」として完全ボランティアにしてみたんです。「一年やってみて、ダメそうだったら戻そう」と説明して。僕たち仲間は、こっちのほうが絶対に楽しいっていう自信もありました。

 

リーダーは未来にも責任がある

 

岩崎 一年のお試しPTO、成果はどうでしたか?

 

山本 義務感や強制でなく、ボランティアで参加したから、積極的で和気あいあいとしてるんです。イヤイヤやっている人がいないと、物ごとはこんなにもスムーズに進むんだ、ということを目の当たりにして、その時点で反対する人がほとんどいなくなりました。規約上、会長の任期は3年までと決まっていて、その時点で僕は3年経ってしまったので、次の団長にバトンを渡しましたが、次の代で名前も規約も全部変えることができました。

 

岩崎 その後もPTOはうまく回っているんですか

 

山本 お試しを含めると3年経って、だんだん文化として根付いてきました。年度初めに説明会を開いていますが、PTOになった経緯と共に、「いきいきとボランティア活動をする大人の背中を見て、子どもたちもボランティア精神が育ち、手伝ってくれるようになっています」と体験談を話すと、皆さん安心するようで、進んで参加してくれますね。

 

岩崎 軌道に乗ってきましたね。PTOのイノベーションに対し、ほかのPTAからの反響はありましたか?

 

山本 実は息子がこの春卒業したので、僕もとうとう、PTOを離れますが、今回本を出して僕たちの取り組みが広く知られたことで、全国のPTAの方々から「私たちもPTAを変えたい」という声がたくさん届いています。皆さん、どこかで変えなければいけないという認識は、共通していると思います。

 

岩崎 では、どうしたら変革できるのでしょうか。

 

山本 やはり誰かが先頭に立って先に進めるということだと思います。そして先頭に立つリーダーは、やっているそのときだけでなく、これから先小学校に入ってくる子どもたちや保護者に対しても責任がある、という覚悟を持って挑むことが何より大事なのではないでしょうか。そうしなければ結局前例主義で流されて、「イヤイヤやっている人」をまたずっと作り出すというPTAのシステムを、そのまま未来に先送りしてしまうことになるんですよ。

 

岩崎 ドラッカーの言葉でいう、「真摯さ」ですね。

「(マネージャーが)始めから身につけていなければならない資質が、一つだけある。才能ではない。真摯さである(※)」。

 

山本 それはやっぱりすごく意識しましたね。

 

岩崎 自分の損得だけでは到底できないことですからね。

 

仕事も地域活動も。両立の秘訣は?

 

山本 楽しいこともたくさんありました。仲間が増えていくのも嬉しかったし、何より「お父さんが学校に来るようになった」と子どもたちがすごく喜んでいました。ほかの仲間たちも言っていたのですが、親が学校に来ると、どうやら子どもは安心するみたいです。僕自身も、休みの日はこれまで家でずっと寝ていたけど、PTAのことは妻に聞くし、学校のことは子どもたちに聞く。家族の会話が増えたことは大きな収穫だと思います。

 

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岩崎 とはいえ、仕事の両立は大変でしたよね?

 

山本 仕事の時間が倍に増えたらしんどいですけど、仕事とはまったく違うことをやっているので、むしろ気分転換になりました。

 

岩崎 休日が削られるような感覚はなかったのですか

 

山本 これまでオフが少なかったのかもしれません。「休まず仕事をするのが当たり前、人が休んでいるときに仕事をしてこそ」いう意識がありました。でもPTAに携わるようになって、やはり休むときは休んで別のことをしたほうが自分の人生にとってもプラスになるし、家族との時間も大切にするようになったと思います。それがわかったからこそ、仕事と地域活動を両立させる、生きがいみたいなものがみつかった気がします。

 

岩崎 ボランティアの活動で学校や地域の問題を解決していく。山本さんの活動はまさにドラッカー的な新しい非営利組織の幕開けですね。日本はボランティア活動が根付いていかないという話もありましたが、これから広まっていくでしょうか。

 

山本 昨年、リオデジャネイロ五輪を取材したのですが、日本からもたくさんのボランティアが来ていて、大会運営を支えているのを目の当たりにしました。2020年の東京五輪・パラリンピックで、さらに日本でも広がるのではないでしょうか。現在、僕は町会の理事を務めていますが、地域のボランティア活動も、いろんなかたちでつなげていければと考えています。東日本大震災で教訓を得た防災には力を入れたいですし、貧困や孤独死の問題、そして子ども食堂みたいな取り組みもありますよね。

 

岩崎 そうですね。教育も、今や学校だけで担うのは限界があるでしょうから、寺子屋みたいな形で実現するとか。

 

山本 そういうのもやりたいと思っているんですよ。土曜日授業みたいな形で、地域の仲間たちと様々な職業を紹介するキャリア教育もいいなあと。

 

岩崎 PTA活動も地域活動も、成功の秘訣はボランティア全員が楽しく、そして自ら進んで参加できるようなルールづくりにありそうですね。これからのご活躍も期待しています。

 

※ピーター・ドラッカー著『マネジメント』ダイヤモンド社より

 

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投稿者:michelle