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岩崎書店のブログ

ようこそ! ここは子どもと本のメディアです

PTAが20年間先送りしてきた問題を劇的に解決した、たった1つの方法<前編>

 

「PTA」。それは小・中学生のお子さんを持つ母親が、この時期もっとも敏感になるキーワードのひとつです。この春も、年明けから「小学校やばいPTAやばい」という匿名のブログ記事や、SNSで「#PTAやめたの私だ」のタグが立つなどPTA論争が注目を集めています。

  毎年繰り返すPTA問題を何とか解決できないか。お子さんが通う小学校のPTA会長就任後、「もしドラPTA改革」を宣言、PTAを100%ボランティア型の運営組織に生まれ変わらせた毎日新聞記者の山本浩資さんに、『もしドラ』(※)の著者で岩崎書店代表の岩崎夏海が伺ったお話を、2回にわたってお届けします。

 

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 毎日新聞記者の山本浩資さん(左)、岩崎書店代表取締役社長の岩崎夏海(右)

 

きっかけは、東日本大震災

 

岩崎 はじめまして。今日はよろしくお願いします。

 

山本 こちらこそよろしくお願いします。

 

岩崎 早速ですが、山本さんの本職は新聞記者ですよね。超多忙なイメージがありますが、なぜわざわざPTAに携わろうと?

 

山本 娘の同級生のお父さんたちとバーベキューをする機会があって、「地域とつながるには、PTA活動に携わるのが手っ取り早いかな」という話をしたんです。それが回りまわって、いきなりPTAの推薦委員の方から「PTA会長を引き受けてもらえないか」と電話がかかってきまして。

 

岩崎 なるほど。地域問題には、もともと関心があったのですか?

 

山本 きっかけは、東日本大震災でした。取材で被災地に行ったのですが、地域のために奮闘する方を見て、人と地域のつながりの大切さをすごく感じたのです。同じ頃、社会問題として孤独死などの記事も書いていたのですが、決まって「地域のつながりが薄れている」という枕詞を使う。ふと、ぼく自身、地域とのつながりがまったくなかったことに気がついて、まずはPTAに参加するところから始めようかなと。

 

岩崎 それまで小学校との関わりはあったのですか?

 

山本 ほとんどなかったですね。そもそも学校に行くのも、運動会やマラソン大会を見に行く程度でした。PTAがどんな組織なのかも知らなかったですし。

 

岩崎 なるほど。では、最初からPTAの改革に意気込んでいたわけではないのですね。しかし、よく会長職を引き受けましたね。

 

山本 周りのサポートもあるからと言われていたので、何とかなるだろうと思っていました。でも就任前に、今後の予定が書かれた手紙を渡されて「だまされた!」と。

 

岩崎 えっ?

 

山本 4~5月の予定がぎっしり詰まっていたんです。会長だけじゃなく役員も委員も、仕事が山ほどある。そこで慌てて、「これは何のために、どんな理由でやるのですか」と聞いたのですが、誰も答えられない。「20年以上前から、ずっと同じルールでやってきて、引き継がれてきたので」と。

 

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岩崎 前例踏襲主義ですね。

 

山本 そうです。しかも、PTAの役員や委員は毎年一年交代で変わっていくので、なぜそれをやるのか、理由や意義がわからないまま、引き継いだ仕事をこなすだけで時間切れとなり、次の代に引き継ぐ、という状態が毎年続いていたんですね。

 

岩崎 なるほど。

 

山本 ぼくは新聞記者の性分もあって、引き受けたからには、あやふやな状態のまま次に引き継ぐのは嫌でした。実は調べてみると、20年前にもPTAの負担を軽減しようとする取り組みがあったようでしたが、結局ほとんど変わらないままずっと続いていたのです。だから、どこかで変えたい。でも、どう変えればいいのかわからないまま、結局悶々と悩んだまま一学期が過ぎ、夏休みも明けてしまって・・・。そんなときです、『もしドラ』に出会ったのは。

 

 

PTAの顧客は誰なのか

 

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山本 仕事を終えて帰宅したら、たまたま子どもたちがテレビで、映画の『もしドラ』を見ていました。で、一緒に見てたら、「イノベーション」という言葉が出てきた。

 

岩崎 よりよくなるために、従来の戦略を見直し、新しい満足を生み出す。

 

山本 そうです。さらに、「野球部にとって顧客とはだれか」というシーンになった。そのとき、ふと思いました。「じゃあ、PTAにとって顧客って誰なんだろう」と。

 

岩崎 なるほど。

 

山本 そこで、食卓を囲みながら家族と話したんです。ぼくが、「PTAの顧客は子どもかな」と言ったら、娘が「いや、学校にかかわる人みんなじゃないの」と。子どももそうだけど、保護者、先生、地域の人たちだって顧客なんじゃないかと。

 

岩崎 まさしく、学校にかかわる人全員ですね。

 

山本 そうです。「子どものため」という意識が強すぎると、平等に犠牲を払うという義務感が先に立つ。でも、保護者や地域、学校にかかわる人みんながハッピーになるしくみをつくれば、PTA活動も楽しくなるのではないか。さらに、「もしドラPTA」のネーミングで興味をひき、ドラッカーの改革の手法を使えば、参加してもらえるのではないかと思いつきました。

 

岩崎 確かにおもしろそうですが、周りの理解は得られたのでしょうか。

 

山本 そう簡単にはいきませんでした。まず、顧客である皆さんの声を聞かなければと、保護者アンケートの実施を提案したのです。ところが、当初役員からは「歴代の役員が頑張ってきたことを否定するような意見が出てきたら傷つくし、そもそも誰が集計やまとめをするのか」と総スカン状態でした。だけど、何とかみんなで手分けしてやろうと実施にこぎつけて。PTAだよりに「『もしドラPTA』を始めます。アンケート回収率9割をめざします」と書いて配布したら、先生方も回収に協力してくださって、結果、96%の回収率だったんですよ!

 

 

ようやく話を聞いてくれる役員会が現れた

 

岩崎 それはすごいですね。

 

山本 回答内容も熱い意見が多く、アンケート用紙の自由記入欄に書ききれず、紙を追加してびっしり書いてくれる方もいました。「ようやく話を聞いてくれる、風通しをよくしようとする役員会が現れた」という雰囲気でしたね。

 

岩崎 これまでは声をあげても黙殺されたりしたのでしょうか。

 

山本 そうですね。確かに、一年交代で、しかもボランティアで運営しているわけですから、あがってくる声を全部聞いていたら、組織が回らなくなる可能性がある。だから、意見は言わせない、という風潮があったのかもしれません。でも、この96%の回答結果を見て、改めてこのままでやっていくのは無理だ、と確信しました。

 

岩崎 それはどういうことですか?

 

山本 これまでのPTAは、専業主婦の家庭を中心としたシステムになっていたので、活動時間は平日の昼間に行う、というのが基本でした。ところがアンケートの集計結果、専業主婦、フルタイム勤務の方、パートタイム勤務の方の割合が、3:3:3でほとんど同じだったんですよ。さらに、アンケートで活動時間についての希望を聞いたところ、皆さんバラバラの回答だったのです。

 

岩崎 回答結果で、隠れていた問題が明らかになったというわけですね。

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山本 はい。待機児童問題が盛んに言われ始め、共働き世帯がこれだけ増えている。そんな中、PTAは20年も前につくったシステムのまま、この先、10年後も続けられるのだろうか? いや、それは絶対に無理だろうと。そこから、とにかくPTAを変えていこう、もっとみんなが楽しく参加できる方法をみんなで考えようよ、という方向に、みんなの思いがグッと寄ったのです。

 

岩崎 イノベーションの突破口になったのですね。

 

山本 はい。それが一年目です。そこから、「来年も一緒にやります」と言ってくれる仲間や、「役員じゃなかったけど手伝うよ」というお父さんもいて。そしていよいよ、二年目に改革をスタートしたのです。

 

 『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』

岩崎夏海・著/ダイヤモンド社

 

 

後編に続く……

www.iwasakishoten.site

 

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投稿者名:michelle