岩崎書店のブログ

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投資のカリスマ藤野英人さんに聞く「子どもに教えたいお金のこと」

今年も子どもたちには嬉しい時期がやってきました。クリスマスにはサンタクロースや家族からのプレゼント、お正月にはお年玉。

お年玉を受け取ったあとは、お金の管理や使いみちをどう教えようか頭を悩ませる方も多いことでしょう。そもそも、お年玉はおろか、日頃のおこづかいも同様に悩んでいるのに!いや、それ以前に、親の自分とて家計の管理に自信なし。

年金制度の破綻や金融機関の低利率など、不安材料が増える一方の昨今、個人で金融資産の管理運用能力が問われることは確か。親が頼りないぶん、わが子にはしっかりと知識を身につけ、これからの時代を生き抜いてほしい。

この年末年始に抱く不安を何とか払拭したい!ということで、運用のカリスマとして名をはせる、レオス・キャピタルワークス社長の藤野英人さんにお話を伺いました。

 

藤野英人 岩崎書店のブログ お年玉

藤野英人(ふじのひでと)

レオス・キャピタルワークス株式会社代表取締役社長・最高投資責任者。1966年富山県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、国内・外資大手投資運用会社でファンドマネージャーを歴任。2003年レオス・キャピタルワークスを創業。主に日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」「ひふみプラス」「ひふみ年金」の運用で高いパフォーマンスを残しており、シリーズ3本の合計運用資産総額は5000億円超。投資教育にも注力しており、明治大学商学部兼任講師、JPXアカデミーフェローを長年務める。一般社団法人投資信託協会理事。近著に『ヤンキーの虎-新・ジモト経済の支配者たち』(東洋経済新報社)、『投資レジェンドが教える ヤバい会社』(日経ビジネス人文庫)。

 

日本人は世界一ケチ?

 

── 子どもにはお金のことをきちんと教えたいのですが、まず大人の自分に知識がありません。なぜ、日本では多くの人が「お金」に苦手意識を持っているのでしょうか? 

 

藤野そうですね。日本人は、お金に対してあまりいいイメージを持っておらず、人前でお金について話すのを避ける傾向があります。世界一貯蓄が好きな民族とも言われ、コツコツとお金を貯めるのは得意なのですが。

個人の金融資産の内訳を諸外国と比較すると、日本人は圧倒的に「現金・預金」の比率が高いことがわかります。いっぽう他の国では、有価証券や株式といった「投資」の比率が高いのです。

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家計の金融資産構成 出典:2017年8月 日本銀行 資産循環の日米欧比較



また、日本は先進国の中でもっとも寄付をしない国でもあります。たとえばアメリカでは、成人一人あたりの年間寄付額は13万円ですが、日本の成人が年間に寄付しているのはたったの2500円。投資もしなければ寄付もしない、つまり、自分のお金は現金か預金で守るだけなんです。

 

── 日本人はケチということでしょうか?

 

藤野いや、お金について、あまり考えていないのだと思います。金融庁の調査では、金融教育を受けたことがある人は全体の約3割にすぎないことがわかっています。日本は諸外国に比べて金融教育が遅れており、お金に関する正しい知識を持っていないため、自分のお金がどう流れ、自分がお金を通じて社会に参加しているかを考える機会がないのです。結局、教育費や老後資金など将来に備えて、自分の知識の範囲内でできることとして、貯金を選ばざるを得ないのだと思います。

金融教育を受けたことがない人は、これから新たに金融について学ぼうという意欲が少ないこともわかっています。仕事や学問の勉強にはいたってポジティブなのに、ことお金に対してはネガティブになってしまう。お金といったら貯めるか節約するかしかなくて、社会に活かす気がないというわけです。

 

── 確かに、何をどう学べばいいのかがわからず、うろたえるばかりです。

 

藤野お金の知識だけではなく、日本には経済のしくみを勉強する機会がありません。米国では80%の州で、義務教育の段階で経済を勉強するのですが、日本では中学・高校の6年間で用いる教科書の中で、経済や株式会社を扱うページ数が、たったの2ページなのです。経済は社会科のカリキュラムに組み込まれていますが、ご存知の通り社会科といえば、日本史、世界史、地理が中心。大学などで経済学を専門に選ばない限り、経済を勉強する場はほとんどありません。経済大国と言われる日本ですが、実は国民の大半が経済を学んで来なかったのです。

 

── 日本と欧米では、お金の知識だけでなく、金融教育にも隔たりがあるということですね。

 

藤野はい。しかしこれではまずいだろう、ということで、いよいよ金融庁が旗振り役となり、金融教育に力を入れる方向になってきました。ですが、気をつけなければならないのは、どんな内容を教えるかということです。

実は経済界でも、今後の金融教育のあり方について議論し、私も加わることもあるのですが、そこでよく出る話が「バーチャルマネーで投資のマネーゲームをさせてみようか」というものです。しかし、私はこの考え方にとても違和感があり、反対しています。経済や金融の知識が何もないのに、いきなり投資ゲームを体験すれば、テクニックは身につけられますが、経済の本質を理解することにはならず、とても危険だと考えています。

働くことは素敵なこと

 

── では、どんな金融教育がよいのでしょうか。

 

藤野私は常々、「お金の教育は勤労教育から」とお話しています。たとえばご家庭では、お子さんに「宿題やりなさい」と勉強するよう促していると思いますが、今勉強することが将来どんなことにつながるのか、そして働く意義や人生の目的は何なのかまでは、普段なかなか教える機会はありませんよね。

 

── 具体的にはどういうことでしょうか?

 

藤野端的に言うと、子どもたちには「働くことは素敵なことなんだよ」と教えたいんです。以前、大学での講義で「働く」ことのイメージを受講生に聞いたとき、「ストレスと時間をお金に換えること」と捉えた学生が8割もいました。なぜこのように、仕事に対するネガティブな潜在意識を持つ人が多くなってしまったのか。これは、戦後の日本が急速に経済成長する過程で、企業社会になっていったことに原因があるのではないかと思っています。

終身雇用で大きな会社に守られながら働くというスタイルが増える一方で、自営業者は減っていきましたが、自営業が中心だった時代は、働く現場はもちろん、経営のいろはを身近で見ることができました。「何グラム買うからまけてよ」と、青果店や精肉店のお店ごとに価格交渉するなど、そこでどうやってお金が回っていくのかを間近で見られ、子どもの頃から肌感覚で学べたのです。

ところが現代の企業社会では、サラリーマンは「労務を提供すると自動的に給料が振り込まれる」システムのなかにいるし、子どもたちには身近なコンビニなどでも、商品を棚から選び、レジで店員のお決まりの声掛けに従ってお金を払う、というお決まりの労働の切り売りをしています。働く側のモチベーションに行き詰まりが生じ、そういう親や先輩たちの姿を見て子どもたちは育つ。学生たちが仕事に対して抱くイメージがネガティブになるのも、仕方がないことと言えるでしょう。

 

藤野英人 岩崎書店のブログ お年玉

 

── キッザニアなど、子どもが仕事を疑似体験できる場はありますが。

 

藤野そうですね。確かに一つの体験学習だとは思うのですが、あくまでも「作る」「売る」など機能の切り売りの疑似体験であって、勤労の本質を育むものではないと思っています。極端な言い方をすれば「サラリーマン養成所」で、お金とはどういうものなのかを理解するところまでは至れない。私が本来めざすところの金融教育につながる勤労教育ではありません。

  

── ちなみに、海外ではどんな勤労教育の機会があるのでしょうか。

 

藤野たとえば欧米では、キリスト教が文化のベースになっていることから、毎週日曜日は教会に通い、自分の収入から寄付をするという慣習があります。また、教会や幼稚園、学校が主催するバザーやボランティア活動など、子どもの頃から働く機会もあります。バザーでは各家庭から集めたものを競売したり、レモネードなどを販売しますが、その収益は寄付されるため、バザーの販売で得たお金は崇高なもので、働くことは素敵なことなんだいう意識が芽生えるわけです。日本では、生きていくためにお金が必要で、お金を得るために働くという発想になってしまい、「働く」「お金」がどうしても必要悪というイメージになってしまうのですね。

 

働く人を尊敬する気持ち

 

── 自分の働きで得た収益の一部を寄付する、という文化に子どもの頃から触れているから、寄付や奉仕の概念も自然に身につくのですね。

 

藤野そうですね。それから日本では「働いている人を尊敬する」気持ちが少ないんです。海外では、お客さんがお店の人に「サンキュー」と気軽に感謝を表しているのをよく見かけますが、日本では滅多に見ることはないと思います。おもてなしの国と言っているけど、お客さんから従業員への声かけという点では、世界でも最も少ない国ではないでしょうか。こうした態度もあいまって、日本人は仕事や会社が嫌いになり、働くことを「必要悪」と捉えている気がします。

 

── 根深い問題ですね。親の立場では、どんな勤労教育が可能でしょうか。

 

藤野小学生くらいのお子さんには、身近なテーマで経済を考えてもらいたいですね。私はよく以下の問題を例に挙げています。

問題

あなたはコンビニでペットボトルのお茶を買いました。

値段は150円。

そのお金は、コンビニのレジに収まったあと、いったいどこに行くのでしょうか? 

 

答えはどうでしょう。

コンビニ店舗の売上になる

お店で働いている人の給料にも反映される

仕入れ元メーカーの売上にもなる

茶を栽培する農家の利益につながる

ペットボトル容器製造の原材料やパッケージ会社の売上にもなる

お店への輸送業者のドライバーの給料にもかかわる

etc…

 

挙げだせばキリがないほど、ペットボトルの背後には、何千人、何万人もの人たちが関わっていることがわかります。意識せずレジで支払った「150円」というお金が、多くの人たちに分配され、支えられているのはもちろん、お茶を飲むことで自分も支えられているわけです。

私たちがお金を出して買うものすべてが、「周りを支え、自分も支えられる」という関係を生み出し、無数の人々の仕事がつながってお金が循環している。それこそが「経済」の構造だ、ということが、このような例を考えることで学べるのです。

 

── とても身近なところから経済を学べるのですね。こういった形なら、親子で一緒に考えることができそうです。経済界でも、勤労と金融を学べる動きはあるのでしょうか。

 

藤野私が一番効果があると思っているのが、「起業体験プログラム」です。日本テクノロジーベンチャーパートナーズ(NTVP)の村口和孝さんを中心に推進していますが、学校や地域とコラボレーションが進んでいる、中学生・高校生らが「起業家」としてゼロからビジネスを立ち上げる経験を提供する、体験型の教育プログラムです。具体的には、運動会や学園祭のようなイベントの際などに擬似「株式会社」を立ち上げて、事業計画書の作成から資金調達、実際の運営から決算までチャレンジしてもらうというものです。

 

お金と向き合えば、日本は劇的に明るくなる

 

── かなり具体的なビジネスに近づきますね。プログラムを体験することで、どんな効果があるのでしょうか。

 

藤野働くことへの意識がポジティブになるといいます。「会社というのは付加価値をみんなで作って、楽しいこともつらいことも乗り越えていく仲間で、そしてその活動の価値に価格がついて、それが株価なんだ」ということを、参加者みんなが「腹落ち」できるからです。私は「このプログラムを全国1000箇所で毎年開催するようになれば、日本経済は復活する」と本気で思っています。そのくらい、日本の教育には「勤労教育」が大切なのです。

 

── 切実に重要さがわかってきました。親も学んでいく必要がありますね。

 

藤野お子さんの学びを追体験することで、親御さんも、今からでも無理なく経済を学べるのではないでしょうか。東京証券取引所では学校の先生たちへのセミナーも行なっていますが、まだまだ大人には抵抗感があるようですので、じっくりと意識改革を進めていきたいですね。

 

── 最後に、子どものころからお金ときちんと向き合えるようになると、どんな大人になれるでしょうか?また、そういう子どもが増えたら、日本はどう変わるでしょうか?

 

藤野物事の本質や社会の成り立ちがわかるようになるので、自立心が養われると思います。そして、自分で主体性をもって未来を考えられるようになるのではないでしょうか。学校など、今自分が属している組織だけに留まらず、視野を広く物ごとをとらえられるようになりますね。ストレスともうまくつきあえるようになって、日本の未来は劇的に明るくなるのではないでしょうか。

 

おわりに

藤野さんにお話を伺うまでは、子どもに教えるべきお金のこととは管理の仕方や使いみち(買い物、貯める、寄付するなど)だと考えていました。でも、もっとその手前、人との関わりかたや働くことについて、親子で一緒に学んでいくことが大事なのですね。取材後、まずは自分が買い物などの際に「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えることを心がけるようになりました。親が実践、実感しなければ、子どもにも身につかない。働くことの素晴らしさも、まずは大人が改めて意識していかなければと思いました。

 

 

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