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桃太郎は社会を映す鏡!? 空からのぞいた桃太郎刊行記念イベント 前編

こんにちは。岩崎書店ブログ管理人の大塚芙美恵です。

紀伊國屋新宿本店にて、昨年の10月に行われました『空からのぞいた桃太郎』の刊行記念トークショーの様子を前、後編でレポートします。

当日登壇したのは、『空からのぞいた桃太郎』の作者である影山徹先生、編集を担当した弊社CEO岩崎夏海、そしてスペシャルゲストとして、上橋菜穂子先生が刊行のお祝いに駆けつけてくださいました。

それではイベントの様子をまとめましたので早速ご覧ください。

 

後編はこちらからから

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空からのぞいた桃太郎 影山徹 上橋菜穂子 岩崎書店のブログ

 

『空からのぞいた桃太郎』は、桃太郎を俯瞰でみるというコンセプトで描かれました。長い間読み継がれている桃太郎には、知られざるツッコミどころがあることはご存知でしょうか? 桃太郎は善なのか悪なのか? 一体何者なのか? そういった疑問をみなさんに投げかける内容となっています。

 

空からのぞいた桃太郎

空からのぞいた桃太郎

 

 

岩崎夏海(以下 岩) 本日はよろしくお願いします。私は岩崎書店で社長を行いながら、編集者として絵本制作も行っています。色々と時代が変化をしていく中で、新しい絵本を作ろうとしていたときに、既存の絵本とは全く違うアプローチをしようと考えていました。そういった中で、絵本作家だけではなく、イラストレーターの方ともタッグを組もうと思い、真っ先に思いついたイラストレーターが影山徹さんでした。というのも、影山さんの描いた『十五少年漂流記』や『旅のラゴス』の表紙が、中高生の頃から大好きだったからです。主人公が旅した舞台そのものを、俯瞰で描かれているような、広がりのある絵で、小説との響き合いを感じていました。

その後、私の著書である『チャボとうさぎの事件』という小説を出版するときに、表紙の絵をお願いしている縁もあり、実は長い付き合いです。

それでは影山さんにご登場いただきます。

 

影山徹

1958年青森県生まれ。東京デザイナー学院卒業。印刷会社、デザイン事務所を経て82年よりフリー。90年講談社「年鑑日本のイラストレーション」新人賞。07〜08年『薄暮』篠田節子(日本経済新聞夕刊)09~10年『氷山の南』池澤夏樹(東京新聞朝刊など)12~13年『アトミックボックス』池澤夏樹(毎日新聞朝刊)の挿絵。ピンポイントギャラリーなどで個展。書籍の装画を中心に活動。

 

 

影山さんの表紙絵には発見がある 〜必ず物語を読んで描きます〜

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(左) 岩崎書店CEO 岩崎夏海(右)影山徹先生

 影山さんは、私の書いた小説『チャボとうさぎの事件』の表紙絵を描くにあたり、原稿を読んでくださったんですよね。実際に読んで描いてくださる方は少ないので、驚きました。

影山徹先生(以下 影) 小説は原稿を必ず読んで絵にします。こだわっているのは、読者が読んだ後に表紙の絵を見返すと何か発見がある、ということです。そういった意味でもよく読み込みますが、時々誤植を見付けるんですね。上下巻の主人公と脇役が入れ替わっていることもあって、編集者に整合性ないんじゃないですかとか言ったり(笑)。

 なるほど(笑)。影山さんの描かれた『十五少年漂流記』や『旅のラゴス』の表紙を見ていると、内容をよく理解し、なおかつそこに想像の羽を広げてアイディアを生み出されているのがよくわかります。

ストーリーの裏側まで補完して理解していないと、あの絵は描けません。まさしく影山さんの絵には行間が描かれていて、小説を読む能力がとびぬけておありになることが伺えます。

十五少年漂流記 (新潮文庫)

十五少年漂流記 (新潮文庫)

 
旅のラゴス (新潮文庫)

旅のラゴス (新潮文庫)

 
チャボとウサギの事件

チャボとウサギの事件

 

 

 それではここでスペシャルゲストです。影山さんの絵本初出版のお祝いに駆けつけてくださった上橋菜穂子先生です。どうぞ。

 

上橋菜穂子

作家・文化人類学者。
東京都生まれ。香蘭女学校高等科卒業。立教大学文学部卒業。
立教大学大学院博士課程単位取得(文学博士)。専門は文化人類学。
オーストラリアの先住民アボリジニについて研究している。
現在、川村学園女子大学特任教授。
1989年『精霊の木』で作家デビュー。主な著書に『精霊の守り人』を初めとする「守り人」シリーズ、『狐笛のかなた』、『獣の奏者』、『鹿の王』などがある。

 

上橋先生と影山先生の縁

空からのぞいた桃太郎 影山徹 上橋菜穂子 岩崎書店のブログ

上橋菜穂子先生(以下 上) 影山さんとは、『鹿の王』の表紙を描いてもらった縁がありまして、本日はお祝いに伺いました。

 ありがとうございます。

 『鹿の王』の表紙絵を、誰に描いてもらうか決めるときに、影山さんの絵を見た瞬間、即決でお願いをしました。先ほどもお話があったように、影山さんの絵は、一瞬で世界が見えるんですね。大変緻密に描かれていますが、その緻密な部分というのが要点しかないので、向こう側に「わーっ」と物語の世界が広がって見えてきます。描きすぎていないがゆえの、インパクトのある絵だと思っています。

つまり人が世界を見るときに、どこに印象を与えられているかを、影山さんは察っすることができるんだろうと思いました。ただあまりにもインパクトがありすぎて、『鹿の王』が発売されたときに、子鹿がやがて王様になっていくストーリーと勘違いされましたけど(笑)

一同(笑)

鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐

鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐

 
鹿の王 (下) ‐‐還って行く者‐‐

鹿の王 (下) ‐‐還って行く者‐‐

 

 そして今回『空からのぞいた桃太郎』を読ませていただいて、「あぁ影山さん!」と思いました。俯瞰の視点で描かれることって、なかなかないですよね。そして絵本は、ほぼ絵だけで伝わってくるもので勝負をしていくわけで、そこがすごく面白いなぁと思いました。
そして影山さんと私は、驚きの繋がりがあるんですよね。

 そうなんです。共通の知人がいて、本日も客席にいらっしゃっている、イラストレーターのくまあやこさんです。彼女はものすごく魅力的な絵本を描くんですよ。『鹿の王』がでたときに、上橋さんがくまさんの家庭教師だったと聞いて驚きました。

 そうなんです。あやちゃんが中学一年生の頃から、ずっと家庭教師をしていていました。

 そして影山さんのご自宅と上橋さんのご実家はお近くなんですよね。

 はい。私はお目にかからなかったのですが、『鹿の王』を作るときに、編集者さんと影山さんの打ち合わせ場所が、私の行きつけだった喫茶店なんですよね。

 そうなんですよ。

 大学の学生時代に、ご飯を食べて帰ってきてるのに、その喫茶店で本を読みながらアールグレイのミルクティーを飲み、ツナサンドを食べるというのが楽しみだったんです。そのおかげで太りましたね。1日4食食べてますからね(笑)

 

イラストレーターくまあやこさんの絵本です↓

きみといっしょに

きみといっしょに

 
マンゴーの絵本 (そだててあそぼう)

マンゴーの絵本 (そだててあそぼう)

 

 

影山先生と上橋先生に共通のお知り合いがいたとは! 影山先生の行間の描かれている絵の魅力に、すっかり会場も魅了されていました。

後編は『空からのぞいた桃太郎』の制作秘話、『鹿の王』の裏話なども出てきます。それでは後編も是非御覧ください。

 

後編はこちらから

www.iwasakishoten.site

 

投稿者:大塚芙美恵