岩崎書店のブログ

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地域の人と一緒に生きる!? 地方暮らしのホントのところ

つ、つかれた……

ここ(私の仕事場)は大都会東京の原宿。平日もゴールデンウィーク中も、この辺りはどこへ行っても人、人、人。

すっかり東京で消耗してしまいました。

 

そんないつもの昼休み……

 Facebookいじっていると……

 

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とても楽しそうな生活!

3年前に島根県に突如引っ越した友人、松原真倫さんの姿でした。

 

・そういえば、松原さんも東京で消耗していたのかな?

・私も地方で暮らしたら、こんなに元気になれるの?

・地方で暮らすってどういう感じ?

 

そこで松原さんが島根から仕事で東京に出張してきた折に、地方で暮らすリアルを聞いてきました!

 

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松原真倫さん

1986年、東京都生まれ。慶應義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程修了。大学では政治学の研究室に所属し、主に自治体研究に取り組む。20144月より株式会社FoundingBaseに入社、島根県津和野町に赴任。津和野高校魅力化コーディネーターとして全国の中学生やその保護者への広報、総合学習の設計・運営、町営英語塾のHAN-KOH運営などを務める。

 

 

都会の研究者から、島根県で地域活性化へ

 大塚 本日は東京出張おつかれさまです。島根県での日々の生活や、子育てのことなど、いろいろと質問させてください! よろしくお願いします。

松原 よろしくお願いします。

大塚 それでは早速ですが、松原さんはなぜ島根県に引っ越されたんですか?

松原 島根県の地域活性化を行うためです。移住してから約3年になります。

大塚 松原さんが引っ越したときは、すごく驚きました。政治学の優秀な研究者としてこのまま東京で研究を続けるのかと思っていました。なぜ地域活性化の道を選ばれたんですか?

松原 そうですね……実はいろいろと悩んでいた時期がありまして。

大塚 といいますと?

松原 東京で研究者として過ごしている中で、自分自身ができることややりたいことよりも、ライバルに勝てる基準に合わせて物事を判断してしまっている自分に気が付いたんです。研究者になることが手段ではなく目的になってしまい、自分の気持ちが苦しくなっていったんですね。

大塚 なるほど。際限のない競争に身を置くという生き方に疑問を覚えていったんですね?

松原 はい。そんなときに、保育園の頃の将来の夢を思い出して、それが笑っちゃうんですけど、「救急車」なんです! 周りの子はちゃんと「人」に憧れていたのに、私は「車」に憧れていました(笑)

そこで改めて自分の根っこに「困っている人を助けたい」という強い気持ちがあったことを思い出しました。研究ももちろん人の為になりますが、現場に出るというよりは、自分の机上で完結してしまうことが多かったんです。「今だれかの役に立っている」という実感を肌で感じたいという気持ちが募っていきました。

大塚 そんなときに、地域活性化をしている株式会社FoundingBaseに出会い、入社したわけですね。

松原 そうです。実際に地方で暮らし、地域活性化を行っているこの会社なら、「目の前の人の役に立てる」と思いました。東京だと仕事の方に自分を合わせなくてはなりませんが、ここだったらゼロから自分で仕事を作っていけると思ったんですね。自分にしかできないことや、自分たちでムーブメントを作れるのではないかと思いチャレンジしたくなりました。

大塚 今はどういった取り組みをされているんですか?

松原 現在は島根県立津和野高校を廃校の危機から救うのがミッションです。人口減少で、このままのペースだと廃校になるという状態に追い込まれています。そこで全国の中学生が行きたいと思える学校に変えるべく、地域の方や先生の力を借りて取り組みを行っています。具体的には入学者を増やすための広報活動や、学校併設の無料で通える町営の英語塾「HAN- KOH」を運営しています。

大塚 町営の英語塾って初めて聞きました。

松原 珍しいかもしれませんね。現在は津和野高校の半数以上である約100名の生徒さんが塾に通って、それぞれ自分のレベルに合わせて授業を選び受講しています。ゼミ形式・ワークショップ形式、グループ学習など様々な形式の授業を行っています。

大塚 充実してますね。

松原 そう思います。学校は地域の方にとってみんなの期待や想いが集まる特別な場所です。いつまでも津和野高校を残せるように日々活動しています。

 

株式会社FoundingBaseと津和野高校、ぜひチェックしてみてください↓

foundingbase.jp

 

tsuwano.ed.jp

 

 

松原さんが住んでいる町

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島根県鹿足郡津和野町

人口約7,800人、約3,600世帯の島根県の南西に位置する町。萩・石見空港(羽田空港より90分)より車で約1時間ほど。
野山や安蔵寺山などの山々に囲まれ、日本海へ注ぐ清流「高津川」が流れている。城下町の町並みと共に、祭りや伝統文化が受け継がれ「津和野弥栄神社の鷺舞」は国の重要無形文化財として指定されている。

www.tsuwano.net

津和野町の自然

大塚 津和野町の方達はどのように自然と共生しているんですか?

松原 そうですね。山登りや虫取り、山菜取りなどをしていますね。また津和野町は高津川というとても綺麗な川があって、そこで釣りや川遊びをしています。ある日、川の恵みの会という集まりで鰻、モズクガニ、スッポン、鮎を食べる機会がありました。もちろん全部天然です。まだ引っ越してきたばかりの出来事だったので、その自然の豊富さに驚きました。

大塚 全部天然ですか! 東京だとありえないですよね。

松原 そうですね。あとはイノシシ狩りを見せてもらいました。目の前でイノシシをさばいて食べさせてもらえるんです。

 

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大塚 東京にいたときの松原さんは「狩り」とはかけ離れたイメージでした!

松原 そうですよね! 自分でも気持ちの変化に驚いています。津和野町にいると興味が湧いてくるんですよね。できること全部やってみたいなって。

大塚 なぜそういった変化があったんですか? 

松原 言葉ではうまく説明できませんが、自然とそういったモードになったんですよね。野生の本能が目覚めたのかもしれません(笑) 

あとは空気が美味しいです。島根県について、飛行機を降りた瞬間、全然違います。酸素が濃くて深呼吸したくなる感じです。

大塚 自然と触れ合う生活、うらやましいです。

 

目の前に自分のやれることがある

大塚 今のお話を伺っていると、津和野町の方たちが和気あいあいと過ごしていらっしゃる光景が目に浮かびます。

松原 そうですね、津和野町の方たちは、地域に対する愛情が深いです。ここでは自分の住んでいる地域を自分たちの手で良くしようという強い責任感を持っていらっしゃる方がほとんどです。当たり前の事かもしれませんが、東京にいた頃はそんな気持ちになったことはありませんでした。

大塚 確かに東京にいると、与えられている環境にただ住んでいるだけという感覚ですよね。

松原 そうですよね。私が育ってきた地元にも、大好きな近所のおじちゃんやおばちゃんは沢山いました。しかしその人たちのために何かできたことってなかったんですね。どうすれば良いかわからなかったし、声を掛けてもらえたこともなかった。「この人たちのために何かできてたらよかったのに」という原体験がずっと心の中にありました。

大塚 東京には近所の人とあまり深く関わってはいけないという雰囲気がありますよね。

松原 そうなんですよね。でも津和町では、目の前に「できること」があるんです。例えば、農家のおじいちゃんから電話がかかってきて、「畑のシートを外すの手伝って」って言われるんです。そんなの当たり前に手伝いますよね? そうやって津和野町にいると、目の前に困りごとが沢山あって、毎日地域の役に立てるんです。みんなが喜んでくれるのが純粋に嬉しいし、地域の人たちと互いに助け合い、一緒に生きるという感覚を持てたのは初めてのことでした。

大塚 地域の人と一緒に生きている感覚、実感したことないかもしれません。

松原 そういった家族でも友だちでもない人に喜んでもらうという経験があると、見知らぬ人にも優しくできるんだろうなと思います。

 

外部の人の力を欲している

大塚 松原さんは地域の方と信頼関係を築いているご様子ですが、どのように打ち解け合っていきましたか?

松原 特に苦労をしたことはなく、自然と打ち解けられました。地元の人じゃないからって門戸を閉ざされたことはないですし、むしろ様々なことを一緒にやろうって誘ってもらうことが多いですね。

あと地方って実は、外部の人の力を欲している部分もあるんです。

大塚  それはどういうことですか?

松原  地方の役場は職員の人数が減らされて、今まで役場で行っていたことを自治体に任せようという流れができています。例えば地域の人が町の予算の使い道を企画書にして提出しないといけません。しかもその企画書の内容によって与えられる予算が変わってくる。そんなのいきなりできる訳がないですよね? みんな困っている中で、他の地域から移住してきた人の新しい発想が重要となってくるんです。

大塚 自分たちの町をより良くするために、仲間を求めていると。

松原 そうです。そんなわけで、津和野町も新しい移住者をめちゃめちゃ待ってます! 是非来てください!

 

子どもは地域全体の財産 

大塚 生後8ヶ月のお子さんを持つ松原さんにとって津和野町での子育てはいかがですか?

松原 子どもが生まれると地域の方がすごく喜んでくれます! その喜び方をたとえるなら、親戚に子どもが生まれたときのような反応です。

大塚 そんなに喜んでくれるんですか?

松原 そうです! 津和野町に来て驚いたのは、町の子どもは自分たちの子どもという感覚がすごく強いことです。「子どもたちにこう育って欲しい」「地域の事をこう学んで巣立って欲しい」という思いがすごくありますね。

大塚 地域全体で子どもたちを育てていくんですね。

松原 そうです。どうしても地域との繋がりが薄いと、親にとって子どもは「自分たちだけのもの」という感覚になり、いっぱいいっぱいになりがちですよね。しかし地域の人が親戚の様な距離感でいつも見守ってくれるので、親としての孤独や必要以上の責任を感じなくて済むのはとてもありがたいです。

大塚 なるほど。具体的に地域の方は、どのようにかかわってくれるんですか?

松原 例えば、小学校の授業に地域の人が率先して入り込みます。近所のおじちゃんがわらじ作りを教えてくれたり、川名人が川の遊び方を教えてくれたり。

大塚 そういうオリジナリティ溢れる授業を受けられるのは魅力ですね。

松原 はい、地域の学校だからこそだと思います。あとは必然的に少人数教育ということもあって、子どもがやりたいことをやらせてあげられますね。

例えば、小6の子が総合的な学習の授業の中でバスツアーを実施しました。自分で企画を立ててバスガイドの格好をして、5、6ヶ所農家さんを案内してくれました。とても楽しかったです。町の人も学校と繋がりながら、一緒に子どものやりたいことを実現させようと頑張ってますね。

大塚 なるほど。そう考えると都会の方が人口は多いですが、実際に深くかかわる人は少ないですよね。かえって地方の方が沢山の大人とかかわれるのかもしれません。

松原 そうですね。子どもの頃に沢山の大人とかかわり、「色々な大人がいていいんだ」と思える事は、その後の価値観に影響してくると思います。例えば、親にはこれをしても怒られないけど、近所のおじちゃんには怒られたとか、そういう体験が大切なんですよね。家族でもなく友だちでもない様々な年代の人と繋がっていることは自分の考え方の幅をひろげてくれると思っています。

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大塚 オリジナリティあふれる授業以外にも、少人数教育のメリットはありますか?

松原 そうですね。ひとりひとりの個性とリズムに合った教育を先生がやりやすいことですかね。不得意なところをじっくり学べるということはもちろん、得意なことはどんどん進めようという雰囲気があります。あとは、子どもの数が少ないので、待機児童は0ですね! 保育料無料なんて町もありますよ。

大塚 待機児童0! 都会だと信じられないですね。

 

親の参画が大切

大塚 大自然に囲まれて育った子は、さぞのびのびと暮らしているんでしょうね。

松原 そうですね。津和野町の自然は素晴らしいですし、やはりその中で過ごす生活は、何ものにも代えがたいです。ある幼稚園は牧場の中にあって、園舎をほとんど使わず、雨の日でもレインコート着てどろんこになりながら外を走り回っています。他にも木の名前を教えてくれる子がいたり、自然に詳しくて、素直な子が多いです。

大塚 やはりそうなんですね。

松原 あとひとつ重要な事があって、それは親の参画です。都会に限らず、津和野町も子どもたちだけで好きなように遊びまわるっていうのはなかなか難しい状況もあります。

大塚 大人の目がないと危ないってことですか?

松原 そうですね。そういった意識はあります。特に治安の悪さを感じたことはありませんが、やはりこのご時世心配ですよね。そうなると、いかに大人が付き添って、自然に触れさせてあげられるかという点が重要になってきます。親が山に連れていくとか、地域の人と仲良くなって連れて行ってもらうとか、親も一緒になって楽しみながらそういう環境をつくっていくことが大切です。

 

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 地方暮らしを一つの選択肢に

大塚 地方で暮らしたい! と思っても、仕事が心配ですが、いかがでしょうか?

松原 意外にも、有効求人倍率は東京と同じくらいです。しかし職種が限られますね。例えば広報とか企画の仕事をしたいと思ったら、起業をしないといけないかもしれません。

大塚 やはり仕事が一番ネックですね。

松原 そうですね。しかし私が感じるのは、移住する際に「一生ここに住み続ける」という覚悟はいらないと思うんです。自然に近いところで子どもを遊ばせたいという思いがあれば数年でもいいので、地方で暮らしてみることをおすすめします。

大塚 なるほど。それでも環境を変えるのは、やはり勇気のいる選択ですよね。

松原 そうですね。教育環境って正解がないので、移住前から「100%良い」と確信を持てる環境ってないんですよね。そういったこともあって、地方で暮らすという選択に踏み切れないこともあると思います。でもやはり、地方でしか磨かれないこどもたちの感性って絶対にあると思うんです。様々な年代の地域の人に深い愛情をもらえることや、自然をありのままに感じて育つというのは何ものにも代えがたい経験になるのではないかと思います。

 

松原 ところで大塚さんはなぜ地方暮らしに興味を持ったんですか?

大塚 地方は時間がゆっくり流れているような気がして。川のせせらぎに癒やされたいなと思って……

松原 なるほど。自然から得られる癒しは確かに素晴らしいですよね。しかし先ほど地方は外部の力を欲している側面もあると伝えましたよね。そのため「都会で疲れたから自然に癒されたい」「自分が助けて欲しい」という気持ちが先に立つと、上手くいかないのかなと思います。「自分は地域のために何ができるだろう」という気持ちが大切です。

自分ができることってなんなのか、強みってなんなのかを探しに、地方での生活をスタートすることはおすすめですよ! 

 

最後に

松原さんのお話を伺う中で「地域の人と一緒に生きる」という言葉が印象に残りました。そういった感覚があるからこそ自分の存在意義を感じられ、沢山の人から愛情をもらいながら子育てができるんだと思いました。

都会に住んでいるみなさんも人生の選択肢として地方暮らしを候補にいれるのはいかがでしょうか?

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

投稿者 大塚芙美恵