岩崎書店のブログ

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編集者ホリウチの「すいすい解ける絵本の問題集 」(1)虹問題

みなさま、お世話になっております!

岩崎書店編集部の堀内といいます。

いきなりで恐縮ですが、弊社ブログにおじゃまして、普段のお仕事のことなど書かせていただくことになりました。

ぼくは絵本の編集者として15年近く働いていまして、お世話になった絵本をかぞえたら、やっと100冊をこえたくらいです。

いままでお仕事させていただいて、絵本のことがわかってきたような、どんどんわからなくなるような、微妙な年頃ではありますが、日々なんとなく感じている問題もあります。

このブログでは、絵本作りのときに直面するちょっとした問題について考えていきたいと思っております。

できるかな♪

 

これからはじまるお話は、あくまで一編集者による超個人的見解でありまして、100%絶対的に正しい、ぼくを見ろ、ぼくのほうだけを見ろ!などと、口が裂けても言えない事柄です。

絵本作家を目指す方には、教科書ではなく、副教材的に楽しんでもらいたいですし、読者の方には、ふだん絵本作家がどんな問題とむきあっているか、参考程度にさらっと読んでいただけますと幸いです。

第1回(何回続くかわかりませんが)は、虹問題を取り上げます。

虹といえば、雨であり、雨といえば、困難。

虹は、困難を克服したときの記号として、使われてしまいがちですよね。

主人公がなんやかんやを乗り越えて、シンボルにきれいな虹でも描いておくか、これにて良い感じのラストシーン完成──みたいな安直な発想に、えいやっと釘を刺したいぼくがいる。

困難を乗り越えた記号のように虹を使うのは、もうこれっきにしておくれ! と声を大にしてお願いしたいのです。

 

これが虹問題です。

えらそうですね。

えらそうついでに言えば、絵本における虹の表現について、もっと真剣に考えたいのです。

 

そこで『ぼくのえんそく』です。

ぼくのえんそく (カラフルえほん)

ぼくのえんそく (カラフルえほん)

 

 作は穂高順也さん、絵は長谷川義史さん。

ぼくが岩崎書店に入社して、はじめて担当させてもらった絵本です。

いまから12年前、2005年刊です。

「品切れ重版未定」の呪いにかかることなく、うれしいことに生きながらえております。

 

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これですよ!

ぼくは、伸びやかな虹を見て、作者の穂高順也さん、絵の長谷川義史さん、お二人の絵本作家としての才に驚愕しました。

これが絵本のプロか、これが絵本の表現なのかと。

中の下人生をさまよってきた自分がわたりあっていくのは、こんなすごい表現者たちなのかと。

『ぼくのえんそく』の虹にはフリがあります。

 

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遠足に行けなかった色とりどりのジュースが、水筒に入っていきます。

かわいいですね。

気づいた人がいるかもしれませんが、7色ではなく6色。

残念ながら、よく飲まれているジュースに「青」がないので、青系にちょっと弱い色味にもなってます。

水筒を持ったぼくが雲に乗り、遠足バスを追いかけます。

そして、すったもんだのあげく、ジュースの雨がふり、ジュースの虹がかかるのです。

なんという楽しいアイデア!

 

ぼくは最初に原稿を読んだとき、アイデアにわくわくしながらも、青がなくて虹として成立するのかな、と少し心配に思っていました。

虹のグラデーションを作るとき、青、藍、紫の青系グラデーションの印象は強いです。

これが紫のみになって、はたして虹らしくなるのか、と。

そこでもう一度、長谷川義史さんの描いた6色の虹を見てみましょう。

 

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違和感がないのです。

各色の間に入れられた白線。

まずこれが効いています。

白線によって、虹=グラデーションというイメージをあえて排除しています。

ジュースを各色しっかりと強調し、ああ、これはジュースであり、なおかつ虹であると、パッとわかるように描いています。

色をつなげないことによって、ジュースの虹という存在感を際だたせているのですね。

そして、紫のとなりのピンクをごらんください。

ただのピンクではなく、しっかりと青みを感じさせるピンクで描いているではありませんか!

ピンクの絵の具そのままではなく、確実に青系の色を混ぜているのがわかります。

 

いろんなジュースを連れていって虹にするアイデアと、その特徴を美しく形にした絵。

ジュースとしても虹としても、完全な形で成立しているのです。

絵本におけるすばらしい虹の表現のひとつとして、いつまでも印象に残っているシーンです。

 

ここまでバシッと決まらないにしても、虹の必然性を少しでも高めて描いてほしいなあと、ぼくは思っています。

安易に便利にイメージだけで虹を使わないように気をつけよう!

これにて虹問題解決──(なのかな)。

次回があるかわかりませんが、あれば「暗闇問題」について考えたいと思っております。

 

堀内日出登巳(ほりうちひでとし)

1972年新潟生まれ。岩崎書店編集部所属。担当した絵本に『ぼくのえんそく』(穂高順也・作/長谷川義史・絵)、『よしおくんがぎゅうにゅうをこぼしてしまったおはなし』(及川賢治・竹内繭子/第13回日本絵本賞大賞)『しげるのかあちゃん』(城ノ内まつ子・作/大畑いくの・絵/第18回日本絵本賞)、『けもののにおいがしてきたぞ』(ミロコマチコ/第26回BIB金牌)、『いっさいはん』(minchi)、「めくってびっくり俳句絵本」シリーズ(村井康司・編)、「怪談えほん」シリーズ(東雅夫・編)、「お笑いえほん」シリーズ(倉本美津留・編)など。
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