岩崎書店のブログ

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ジャン・ヴァルジャンが狼に? 五島夕夏さんの描くレ・ミゼラブル 

こんにちは。岩崎書店ブログ管理人の大塚芙美恵です。

今回は、2月18日に「築地本マルシェ」にて行われた、講演「絵本作家 五島夕夏 絵本について語る」にお邪魔させていただきました。

 

「築地本マルシェ」とは、築地本マルシェ実行委員会が主催する、「さまざまな読書の楽しみ方をお伝えするブックフェア」で、今年の2月17日(土)、18日(日)にベルサール汐留にて開催されました。各社の厳選本の展示、販売や、人気作家のイベントなど、読書に関する様々な魅力を発信するプログラムが開催され、来場者数は4000人を超える盛り上がりに!

五島夕夏 築地本マルシェ レ・ミゼラブル 岩崎書店のブログ

 

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そして、今回講演にご登壇された五島夕夏さんは、1992年生まれの25歳、新鋭の絵本作家としてご活躍されています。

お話の中心となる絵本は、岩崎書店より、今年の1月に発売された『レ・ミゼラブル』。五島さんの2作品目となります。

「お話をする場に慣れていないので、今日は11人の方とお茶をするような気分でお話してます」と仰っていた五島さん。絵本制作の裏話など、貴重な話を聞くことができましたので、そちらの様子をお送りします。

 

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五島夕夏(ごとう ゆうか)
1992年7月18日生まれ。桑沢デザイン研究所卒。

学生時代に出会ったロシアの絵本に大きく影響を受け、絵本画家を志す。

2017年に初の絵本『よんでみよう』(岩崎書店)を刊行。その後2018年の1月に、2作目となる絵本『レ・ミゼラブル』(共に岩崎書店)を刊行。
現在はフリーのイラストレーターとしても活動中。

 

レ・ミゼラブル 前編 (ROKUYON)

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  • 作者: 五島夕夏,ヴィクトル・ユーゴー
  • 出版社/メーカー: 岩崎書店
  • 発売日: 2018/01/17
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デビュー作の『よんでみよう』

私が絵本作家を目指した理由は、もともと絵本が好きだったからです。周りの子は、小学生に上がると、徐々にマンガや小説に移行していきます。でも私は、ずっとずっと絵本が好きなままでした。

昨年出した『よんでみよう』という絵本があって、その話しを少しだけしたいと思います。

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この絵本は、0歳から3歳児向けの絵本で、動物たちのお尻がたくさん出てきます。動物たちに名前を呼びかけると、その動物たちが振り返るというストーリーになっています。こんな感じで、白菜みたいなおしりだなと思って、名前を呼びかけると、リスが振り返ります。

 

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よんでみよう

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『レ・ミゼラブル』が絵本に!?

今年の1月に発売した、2作品目の『レ・ミゼラブル』は、あかちゃん絵本の『よんでみよう』とはまた毛色が変わって、100歳でも200歳でも読める一冊になっています。

実は、この絵本を作るまで、私は原作を読んだことがありませんでした。絵本を作るにあたって、初めて岩波少年文庫を読んだのですが、とても面白いという大前提の感想はありつつも、ものすごく難しかったんです。私はまず、カタカナの名前が覚えられない、地名が覚えられない、時代が行ったり来たりする内容なので、今何年にいるのかわからないという状況でした(笑)

 

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1日10ページずつ読んでも、すごく分厚い本なので、なかなか読み終わらないんですよね。それで、岩崎書店の社長の岩崎夏海さんが、この本の編集をしているのですが、岩崎さんは、昔1度読んだことがあるだけで、5分くらいの間に頭の中で構成を考えちゃうんですよ。それで、A4の紙一枚取り出して、ばーっと構成を描いてこれでどうですか? って言われるんです。私が一ヵ月かかって読んで、それでも理解できていないものを、岩崎さんは5分で編集をしてしまう。この人が編集でよかったなって思いました(笑)

実際に絵を描き進めながら、私が難しいなと感じた物語の場面には、特に注意を払ったり、とにかくわかりやすく、簡単に表現することを意識しました。

そして、『レ・ミゼラブル』の内容で衝撃的だったことがあります。今の小説は、最初悪かった人が良い人になったり、良い人が実は悪い人だったというストーリーがとても多いと思うんです。しかし、この作品に関しては、良い人はずっと良い人で、貧乏な人はずっと貧乏で、悪い人は、ずっと悪いまま死んでいったりするんですよ。それが結構むごくて。時代も国も違いますが、私はそれは、すごくリアルだと思いました。また、登場人物1人1人の人生を、きちんと最後の「死」まで追いきる、というのを気持ちいいぐらいにやってくれるのが『レ・ミゼラブル』です。

 

遠くから覗くように読んでほしい

この絵本の特徴として、とても余白が多いんですね。これには狙いがあって、読者の方に、「近くで行われている物語」ではなくて、「遠くから覗いている気持ち」で読んでほしいという思いから、こういった構成にしています。

 

また、これも裏話ですが、登場人物は、全部横顔で描かれているんですね。これは、横顔に統一することで、立体感がなく、とても平面的に見えます。たっぷり色を使ったり、線を丁寧に描くことで、二次元的な印象が活きるように、意識して描いています。これも物語を壮大に見せたいというよりは、淡々と進むように見せたくて、狙って描きました。

 

五島夕夏 築地本マルシェ レ・ミゼラブル 岩崎書店のブログ登場人物はすべて横顔になっています

そして実は、顔の向きにも意味があります。登場人物が、後ろ向きな気持ちになっているときは、顔が文字の方を向いています。一方で、前向きな気持ちになっているときは、右側を向いています。実はこのコンセプトを思いついたのは、絵を全部描き終わったあとだったんですね。担当編集の岩崎夏海さんに、顔の向き揃えたいねと言われました。私は30ページ以上描いたあとに言われたので、半分ぐらい描き直しになるんじゃないかと、ヒヤヒヤしたんですけど(笑)。うまく反転できたのでよかったです。もちろん描き直すページもあったんですけど……(笑)。ただ顔の向きを変えるだけで、すごく読みやすくなりましたね。

五島夕夏 築地本マルシェ レ・ミゼラブル 岩崎書店のブログ気持ちが後ろ向きのときは文字の方を向いています

五島夕夏 築地本マルシェ レ・ミゼラブル 岩崎書店のブログ気持ちが前向きのときは、文字を背にしています



大人も子ども関係なくその人が好きと思ったものが、好きな絵本なんだ

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この銀のスプーンを盗むシーンを見てください。「よこしまなきもちをいだき、しきょうのたいせつにしていたぎんのスプーンをぬすんでにげました」という文章です。これ、私が小学生で読んだら、「よこしまな気持ち」ってどういう意味だろう? と思います。ですが、実は子どもって、大人が思っている以上に大人なんですね。なので、わからなければ面白がるし、わかれば喜ぶんですよね。それは、初めて描いた絵本の『よんでみよう』を、幼稚園に読み聞かせに行ったときに思いました。子どもの反応というのは、私が思っているところでは絶対に笑わないし、私が思っていないところで楽しむし、飽きる子は飽きるし、真剣な子はずっと真剣だし。なんとも統計がとれなかったんですね。

でも実際の子どもたちの反応をみたときに、「子どもだからこういうものが好きだ」というのはなくて、大人も子ども関係なく、その人が好きといったものが、好きな絵本でいいって、すごく納得しました。だから今まで裏話をしておいてなんですが(笑)、『レ・ミゼラブル』も『よんでみよう』もみなさんには何も考えずに読んでほしいと思ってます。

 

なぜジャン・ヴァルジャンは、人ではなくて狼なのか?

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会場からの質疑応答です。

 

質問者 『レ・ミゼラブル』の原作の登場人物は人間ですが、なぜ今回はジャン・ヴァルジャンを狼にしようとしましたか?

 

 ── それはすごく話すべきことでした。ありがとうございます。実はキャラクターをつくるのに、一番時間をかけているんです。

本を読んでいると、ジャン・ヴァルジャンとジャベルは似ているところがあって、それでこそ敵対してしまう部分を持っているなと思ったので、似ている動物を二匹出したかったんですよね。

そういったことから狼と、少しずる賢いきつねというのを対にして、姿形はとても似ているけども、心の持ち方が少しズレているだけで、敵対することがあるというのを表現できたらと思って、このキャラクター設定にしました。

 

質問者 五島さんの描く絵の色使いが好きです。色の使い分けで気をつけていることはありますか?

 

 ── ありがとうございます。そうですね、私はこの色の隣にどういう色を置こうというのは考えずに、直感的に好きな色を塗っています。でも画材にポイントがあって、「水彩色えんぴつ」を使っています。普通「水彩色えんぴつ」は描いたあとに水のつけた筆をのせて、水彩絵の具のようなタッチにするんですが、私はあえて水で溶かさずに、そのまま使っています。芯が柔らかいのが描きごごちがとてもいいです。日本や海外の様々なメーカーをごちゃごちゃに混ぜて、とにかくそのとき思いついた色を隣にのせていく感じで描いていますね。

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五島さんならではの、綺麗な配色も注目です

 

質問者 好きな絵本はなんですか

 ── えーっとですね、小さいころは長新太さんの『キャベツくん』とか『ごろごろにゃーん』とか、西巻茅子さんの『わたしのワンピース』とか。いわゆるどんな女の子も虜になっちゃうものも好きでしたし、母が絵本が好きだったので、色々な絵本を読んでいました。

ブライアン・ワイルドスミスの『くまくんのトロッコ』とか、あとは学生時代にはロシアの絵本にすごく惹かれて、『三匹のクマ』とか『おだんごぱん』とか。一つのロシアの民話でも、たくさん絵本が出ているので、読み比べて、絵でこういうふうに変わるんだって思いながら読むのもすごく好きです。

 

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サイン会も長蛇の列となりました!

 

さいごに

五島夕夏さんの「築地本マルシェ」での講演の様子をお送りしました。

現在 『レ・ミゼラブル』の後編を作成中の五島さん。前編と登場人物が変わっていくこともあり、ますます難しい内容になっていきます。「難しい小説を絵本で表現する面白さというのを噛み締めながら、日々奮闘中です」と仰っていた五島さん。

後編の発売も楽しみです。それでは最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

レ・ミゼラブル 前編 (ROKUYON)

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  • 作者: 五島夕夏,ヴィクトル・ユーゴー
  • 出版社/メーカー: 岩崎書店
  • 発売日: 2018/01/17
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よんでみよう

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 投稿者 大塚芙美恵